大切なもの

  • 2006.12.25 Monday
  • 07:47
雲

ちゃんと疲れるのですね、私の場合。
それに、一晩ねれば、疲れはとれるというのがふつうでしょう。
持病ゆえ、ひとの倍を寝てやっと疲れが漉されて行く。
ここ一年そのようになってきた。

つかれないようにすればいいだろうとおおもいになるかもしれませんが、やはりやりたいし、やればがんばりたい。むりもしたい。

なにかをうるには払わねばならない
なにかをすれば疲れる、ということです。

こんな人生をかさねていると、自分に大切なものはなにかということがはっきりみえてくるし、また、捨てる習慣もそなわってくる。

セレクトしたものをいとおしみ、疲れながら、死ぬまでひっそりと生息していきたい、ですね。

お絵かき教室

  • 2006.12.18 Monday
  • 16:30
冬苺の実
フユイチゴに実がなった。
今朝はヒヨドリがやってきて、赤い実の朝ご飯を食べていた。

特養ホームの絵画クラブの日、モチーフにこれの一枝を持っていった。
あ、Oさんいたいた。いつも玄関でまっていてくださる。かれは右手だけでちぎり絵をやっている。ピカソやジミー大西が好きで、ユニークな作品が苑の壁に貼られている。「Hさん待っているから迎えに行ってやって」と、ひとのことを思いやる人である。
OさんのいうとおりにHさんを迎えに行く。杖でなんとか歩けるHさんが、「絵が描けてうれしい」「両親に感謝している」「歩けてありがたい」などと言いはじめると、体調も機嫌もいい。
Iさんはフユイチゴを描いてくれた。100歳で耳は遠くなったが、「(苑には入ってから)イタリア語も習いたかった。ローマ字は習った」などと話している。あたまはまったく(私たち以上に)ピカピカである。
この三人は普段も絵のとりこになっていて、たっぷりの時間をそそいでいる。
もうひとりのTさんは、おおらかなお嬢奥さんで、その時間だけ淡々と左手で、のびのびした絵をおかきになる。
その日は、Hさんが「歌うたいたいなあ!」といきなりのご希望でるんるん春高楼の花の宴〜るんるん春のうららの隅田川〜を全員で合唱した。どこが絵画クラブやねん。

最初は私ひとりでやっていたが、とてもカバーできなくて、まだ小学生の息子二人を助手につれていったものだ。いまは友人が加わり四人でやっているが、なぜか忙しい。なぜだろう?と帰りの車の中であーだこ−だのミーティング。みんなさーワガママだよね。そしてそうしてくれることがうれしいというめでたい結論になった。


  • 2006.12.14 Thursday
  • 08:05
夕餉

おっちゃんがお休みの日、薪を持って歩き出すとワンコはもうわくわくスキップしている。そしてガラス戸ごしに家のなかを覗き、おばちゃんに「外でごはんですよ〜お支度してくださ〜い」と言いに来る。
ご飯は家の中で製作し、それを外の焚き火で焼いたり温めたりして食べる。
早い話、火をおかずにごはんをたべるというわけ。

朝はふつうにごはんと味噌汁
昼はなんだか残り物のいんちき料理
夜は酒のつまみに魚や燻製などあぶって、あと野菜など
たいした献立ではないが、まことにおいしい。
ワンコは一員としてご相伴に預かる。

鳥の声に耳をすましながらナットーをかきまわし、シイタケを採ってきて焼いてレモン醤油でいただく。いま時分は夕餉はもう満天の星の下である

火を眺めていると、むしろ鎮められる。
洞窟で火を焚いて眠った遠き祖先のことをふと想う。



フツーじゃない

  • 2006.12.13 Wednesday
  • 09:48
落ち葉とマロ

体調がすぐれない。
フツーに忙しくしていただけなのに、フツーでない疲労があとからやってくる。
「ここが痛いって、これ筋肉痛だね、なにやったんだ?」
「落ち葉掃き」
「おまえねえ、うちの道はオレでも掃くのに2時間かかるんだ、フツーじゃないんだよ」
前の年、落ち葉を野菜に施したところ格段にあまくなった。極上の肥料になるのだ。落ち葉は宝と心得ている。
ですもん、よくばりばーさんといたしましてはついオーバーヒートとあいなったわけで。
てゆうか、フツーに頑張りたいだけだよ。

くたびれて、ごはんをたべながらねてしまいそうになる。できれば7時に寝て7時に起きるのだが、寝たとしても、すぐには回復はしないところがフツーじゃない。
腎臓には疲れがよくないトカ。あんたはね、フツーに忙しくしてはいけないのさ。

病弱が、何が悔しいかといって縮小方向にアキラメなければならないことほどくやしいことはない。
な〜んて、もう慣れたけどね。
喘息が軽快して嚢胞腎の下降がはじまるまでのほぼ3年のあいだはフツー志向で、健康幻想にあまくひたり、フツーにうごけて無理ができるという醍醐味をまあ、味わいましたから・・・。知らぬが阿呆で、<開墾>(の手伝い)までしちまったゼ。

しかしねフツーじゃないことの悦楽もあることは・・・ご存知ですね。

「音楽が・・・音楽があれば」

  • 2006.12.12 Tuesday
  • 06:54
少年自然の家の黄葉

秋の黄葉の風景に、Mozartのヴァイオリン協奏曲がよく似合う。

「音楽が、音楽があれば!」映画<アマデウス>のなかの台詞だが。この映画はモーツァルトの音楽が主人公だ。あとはフィクションで面白くなるように作ってある。モーツァルトのキャラは論外、サリエリだって、実際の肖像画をみたかぎりでは温厚そうなおじさんである。

モーツァルト役の人が、<フィガロ>上演を許さない皇帝はじめ取り巻きに訴える場面で、
「・・・5人6人7人・・・ひとがそれぞれ別のことを言い張る、そこに音楽が、音楽があれば!・・・」という台詞なのである。ほんとうに<フィガロ>第二幕のおわりにむかって登場人物7人がみんな違った思惑をかかえてひとつの音楽で歌うのだが、奇跡のようなみごとなハーモニーで聴くものを高揚させる。人間それぞれの違った思惑を音楽で束ねてうねりにのせ、宇宙に放つような感じがする。

ほんとうにひととき音楽が流れれば、この世の不条理で噛み合わせの悪くなった自分のすべりがよくなるような気がするし、ふと音楽が、繕いだらけのこの身にしみてゆくとき、ほんとうにしあわせをかんじる。

<アマデウス>で、凡庸なサリエリはなぜ神は聴く耳をくださって才能を拒否されたのかというが、だれがモーツァルトになろうというのだろう、聴く耳こそ神の大いなるおくりものではないだろうか?



涅槃

  • 2006.12.11 Monday
  • 07:24
ハゼノキ

ある朝、いつもとおなじように窓からの眺めにを視線を放つと、あれと思う。
遠くの木々までいっせいに黄葉している
それぞれがいろあざやかに華やいでいる
秋は空の底がこんなにも明るくなるのか!

こんなに明るく華やいだ季節はほかにあるだろうか?
明るいといえば晴れた雪景色はもっとも明るいだろうが、無機的な明るさで華やかではない。
華やかといえば春のいっせいの開花はとりどりに華やかだが空は湿り気をふくんでいて明るいと言った感じではない。
この明るく乾燥した華やかさに言葉を送ろうと在庫をさぐっていたら、
<涅槃>という言葉がすうとやってきた。

ヤマ暮らし2年目の秋である。1年目はそんな余裕の眼はなかったと思われる。

  • 2006.12.10 Sunday
  • 08:55
波頭

ちいさなイルカのようなもの(腎臓のようにも)が海に浮かんでいて、それが死に瀕している。「しぬんだ」おさない眼をしてそう言うのだった。
「まだうまれたばかりなのに」私も海に浮かびながら言った。
「若かろうが何年もいきようが死はおなじさ。いきていくことがたいへんで苦しいんだ。」
こんな夢をみた。
そうなのだろうか?と夢のイルカに聞いてみる。

夢は、基本的には脳がバグっているのだが、混乱短絡のなかにも一片の真実はある。


恩寵

  • 2006.12.09 Saturday
  • 08:01
12月の空

Aさんが死に瀕している。まったく病気知らずの人で、今年の八月に脚がむくんで病院にいってガンがわかった。ずいぶん前に筋腫で手術したが、残った子宮にガンができ、またたくまに転移してしまった、と娘さんからの電話で知った。「子供のようになってしまいました。うとうとしていますので来ていただければ引き戻されますので。」
お向かいに私の家があった。自分のとびぬけた無常識を知って以来、「真人間」になるひとりプロジェクトを励行していた私に、洗練された常識を生きておられたAさんはさりげなくYESを言い続けてくださった。

ガンセンターというなにか実も蓋も無い名前の病院にお見舞いに行って来た。その気品はそのままに骨と皮になってしまった。以前、よくお昼に呼んでくださり、にこにこと手料理をご馳走してくださったことなど懐かしがり、帰りなずんでいる私に「もう帰りなさい」と澄んだ声で力なく言うのだった。

父もそうだった。元気を絵に描いたようなひとで進行も早かったのだろう、わかったときは胃ガン末期になっていた。臨月で、三歳の子の手を引きやってきた私に、「もう来るな」「帰れ」と言った。

生きてゆくものへの激しいメッセージだと。

そして、先に逝く者は日に日に現世を離れてゆく。もうなにもかもどうでもよくなる、とおもう。
それもなにか恩寵のような気もする。


おまけがひとつ

  • 2006.12.05 Tuesday
  • 00:42
ypsida syuiti

眼がよくない。左の白目が出血して赤くなっている。頭も痛い。長く本を読めなくなってしまった。
若いころ、なにがこわかったといって、失明ほど怖いことはなかった。なにより本が読めなくなるなんてとても考えたくなかった。活字中毒である。

古書街神田神保町、すずらん通りを入ったところに勤め先があったので、本屋にはよく行った。
入ると、背よりたかい書架にぎっしり本があって、天文学的に豊穣な世界がここにはあった。
・・・これを全部読むのには人生は短い・・・と思ったものだ。
完全に活チュウである。

はじめて子供を産んだとき、産褥の床で本を読んでいた。
新生児の面倒をみていた姉が「そんなことをするとあとで眼が潰れる」と言った。その本はおぼえている。新書版の<人間の条件>五味川純平だ。

ああ、そのときの無茶の清算がやってきたのかなあ

なんて言いながら、本を読んでいる。
ここ何十年、あまり小説を読んでいなかった。
20代にスタンダールの<パルムの僧院>そのあとグレアム・グリーン<情事の終わり>を読んでもうこれ以上の小説はないだろうと勝手にきめてしまった。
なにより自分がごちゃごちゃしまくっているのに、それいじょうの人間のすったもんだを読みたくはならなかった。

図書館で、久しぶりに小説なるものを、ふと手にしてぱらぱらやっていたら面白そうなので、借りてきて読んでしまった。というか読まされてしまった。吉田修一を初体験。うまいなあ〜。描写が非凡である。なにげない日常世界がぐいぐい立ち上がってくる。絵でいうとデッサンができているということだ。
あたまのなかで彼の世界が力強く展開してゆく快感に身を任せる。

これは、自分が書いてみて文章のことに興味がでてきたのだ。これらの拙文をひねりだしてきたおまけがひとつ、である。

薔薇

  • 2006.11.23 Thursday
  • 08:30
ブライダルピンク

薔薇が好きなもので、ヤマにも薔薇を植えてある。世話をしていたりするとふと昔の香りがよみがえる。

あれは中学二年の五月だった。
美術の時間に、近くの谷津バラ園にスケッチにいった。
つる薔薇のアーチをくぐると、小道の両脇にとりどりの薔薇が咲いていた。いけどもいけども薔薇の彩と香りにつつまれる。まるで異世界だった。あまり旅行とか物見遊山をしない家だったので、なおさら強烈な印象だったのだろう。いまでも記憶のなかに、あのうすい花弁が無限にかさなりあって、ほのかに香る一日がよみがえる。

そこで描いた薔薇の絵は教室の壁に飾られた。
美術のクマ先生は全員の絵を飾るのだ。そして端から講評を垂れていく。
「この絵は野獣派だ」といって、クラスのひとたちも私も笑わせた
私は野獣に近い中学生ではなかったともいえないらしいが、野獣派のブラマンクがそのころから好きだったから、クマ先生は誉めてくれたのだとおもった。
 
日曜日になって、友とあそびほうけ、送って送られて送ってとやっていると空はだんだん藍いろを濃くしていった。庭仕事をしていた人ももう家にはいっているらしい。家までのみちに電灯がともりだした。ふときがつくとなにやら私の歩調にあわせてかすかな足音がする。巧妙に足音をあわせている。勘違いかもしれない。ふりむきたいが怖くてふりむけない。あそこの電灯までいけば影がうつるとあしをはやめたとたんおしりをずりとさわられた。いきなり心臓がとびだした。「やめて!」といったつもりだが、言葉にならない叫びを吼えて全速力で家まで駆けた。
じぶんの机までたどりつき椅子にすわった。まだ心臓がどきどきしている。
おしり、でよかった・・と思った。闇のなかで見知らぬ人が背後にせまってくることがなんとも怖かった。体がふるえている。
「どうかしたのか?」
廊下を歩きながら父がきいた。
「ううん。なんでももない」呼吸を整えてなにげなくよそおう。
母が亡くなったばかりで不安定な父に心配かけたくなかったし、性的なターゲットになったようなことは言えないとおもった。一方ではしつこく聞いてきてほしいと一瞬思った。それならば話せていたかもしれない。父は怒り、娘は泣きじゃくる・・・それで終わったことかもしれないが、父は立ち止まらずに外に出て行った。
このことは胸の奥にしまうことに決めてみるとなんだか涙がこぼれた。机のうえには学校から持って帰った薔薇の水彩画がひろげてあった。うすももいろの花弁がにじんでしまった。
それはあの薔薇だった。 
この世に船出してはじめて、裏の手に触られた女の子に、あの幸福な日のたしかなしるしが目の下にあった。

十数年も咲かせていた薔薇をヤマにもってきたが、調子がよくない。薔薇は山暮らしなんてしたくなかったのかもしれない。

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